Web3(Web3.0)の全貌を明らかに。分散型インターネットの未来
最近、Web3(Web3.0)という言葉をネット上で見る機会が多くなったのではないでしょうか。しかし、このWeb3がどういう概念で、どういう特徴を持っているかに関しては、ご存じない方もいるでしょう。
そこでこの記事では、Web3の基本情報をまずお届けし、次にWeb3がどういう点で強いのかを明らかにしたいと思います。
目次
Web3(Web3.0)とは?基本情報を紹介
まずは、Web3とはどういうものか、基本情報の解説からです。Web3の前には、Web1.0、Web2.0などもありましたが、それらとの違いなどについても見てみましょう。
Web3とは次世代分散型インターネットのことを指す
Web3はまだ登場してからそれほど時間を経ていない概念ではあります。そのため、定義が明確になっていない部分もありますが、一言でいうと、「次世代分散型インターネット」のことです。
Web3で重要な役割を果たすのがブロックチェーン技術。仮想通貨でおなじみの技術ですが、ブロックチェーンサービスでは、複数のユーザーが情報の共有をし、管理をしています。中央管理者が存在しないのです。
もしどこかで不正・改ざん・複製が行われた場合、情報を共有している他のユーザが検知。ユーザー同士が情報のチェックをしあう関係になっています。
このようにWeb3.0でも、中央管理者、特定企業がなく、多数のユーザーがデータを保持、共有していくので、権限が分散され、多方向の情報伝達が可能になりました。
Web3の提唱者はギャビンウッド氏
Web3の提唱者はキャビンウッド氏です。イーサリアムの共同創設者としても知られる人物で、2017年にWeb3 Foundationを起こしました。Web3の定義をしたのはその前の2014年。「ĐApps: What Web 3.0 Looks Like」というブログで、Web3を提唱しています。
そのブログによると、「自身の情報を任意の企業に預けることが危険である」「意図しない形で情報が企業によって使われる恐れがある」としています。
そのうえで、「管理者を必要としないWeb3.0ブラウザに移行していく」とのこと。ブログの内容はかなり難しいので、簡単にはまとめにくいのですが、大企業による中央主権型プラットフォームから分散型に移行していくというのが趣旨のようです。
Web3(Web3.0)以前の時代を振り返る
Web3を正しく理解するためには、それ以前の時代、つまりWeb1.0や2.0の時代を振り返る必要があります。Web1.0からWeb2.0、Web3と何がどう変遷していったかを追うことで、より具体的にWeb3のイメージがわいてきます。
そこで、それぞれのWebの特徴を詳しく見てみましょう。
Web1.0(1990年代半ば~2000年代半ば)
1990年代半ば~2000年代半ばまで採用された手法がWeb1.0です。特徴は以下のようになっています。
- 企業が一方的に情報を発信
- 利用者は見る・読むだけ
- 画像・動画コンテンツは少ない
- メールが中心のコミュニケーション
- 機械と互換性のあるコンテンツはなかった
1990年代半ばというと、インターネットが少しずつ広まりだした時代。まだ、利用者はそれほど多くありませんでした。
当時は、HTML、HTTP、URI(URL)によって構成され、画像や動画のコンテンツは少なく、文字が主体だった時代。コミュニケーションもメールを中心に行われていました。
この時代の主役をなすWeb1.0では、企業がサイトを制作し、情報を一方的に発信、利用者はそれを見る・読むだけというように一方向的な形でのインターネット利用が行われていました。
- Yahoo!
- MSNサーチ
- 個人のホームページ
Web2.0(2000年代半ば~2010年代後半)
2000年代半ばから導入され始めたのがWeb2.0という概念。Web1.0では、企業が発信者、利用者が受信者という関係でしたが、Web2.0の時代からは、双方向通信が可能になっています。
Twitter、YouTube、Facabook、InstagramなどのSNSも徐々に普及し始め、だれもが気軽に情報発信できるようになったのです。Web1.0時代にも一部では双方向通信はできましたが、それがより拡大したのがWeb2.0時代です。
特徴は以下のようになっています。
- 利用者は閲覧だけでなく、参加もできるようになる
- 利用者が情報を自由に精査して、検索できるようになる
- 評価やコメントで情報交換できる
- 誰でも制作ができ、クリエイターになれる
- 動的なコンテンツが増える
Web2.0の世界では、情報発信がしやすくなりましたが、依然として中央集権的な管理手法が取られていました。つまり、特定企業に個人情報が集約され、その管理・運営を行っていたのです。
その結果、プライバシー保護やセキュリティなどの面で、課題も浮き彫りになりました。そこで登場するのがWeb3.0です。
- YouTube
Web3.0(2020年代現在)
Web2.0の課題として持ち上がったのが特定企業への権力集中。5大企業であるGAFAM (Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)に権力と情報が集まっていました。
その解決を目指したのがWeb3です。権力分散を図ったのです。それを可能にしたのがブロックチェーン技術です。すでに説明したように、多数のユーザーが情報を共有しあい、中央主権的な企業ではなく、ユーザー同士が権力や情報を共有しあっています。
これにより様々なメリットが得られますが、Web3の強みについては次のコーナーで解説します。
権力分散型のWeb3.0が強い理由6選
Web3の時代になって、特定企業に集中していた権力が分散されるようになりましたが、そのことによる強みはどこにあるでしょうか。
詳しく解説します。
理由①個人情報や行動ログデータを自分で管理できる
Web2.0の時代でも、インターネットサービスは便利に利用ができたのですが、個人情報や行動ログデータは企業が管理していました。
一方、Web3では、個人情報やデータを自分で管理・制御できるようになっています。個人情報といえば次のようなものがあります。
- 氏名
- 住所
- 年齢
- 性別
- ID
- パスワード
- 趣味嗜好
これらの情報が個人で管理できるようになると、特定企業に自分の情報が握られる恐れがなくなります。
理由②分散型ネットワークによりセキュリティレベルが向上する
Web2.0の問題点として、次のようなことが挙げられていました。特定サーバーがハッキングされたときに、簡単に情報が漏れたり、改ざんされたりすることです。セキュリティという点では、Web2.0には大きな欠点がありました。
それに対して、Web3では、ブロックチェーン技術を用い、取引履歴は暗号化され、複数のユーザーの承認を経たうえでないと、情報の取り出し、書き換えはできません。ハッカーとしても、狙う相手が一つのサーバーではなく、分散した複数のマシンが対象になるので、簡単にはハッキングできません。非常に困難です。
そのため、Web3は堅牢なセキュリティで守られているのです。
理由③国による制限を受けることなく全員がサービスを利用できる
日本では、だれもが自由にインターネットを利用できます。制限はありません。しかし、世界を見ると、そうなっていない国もあります。
例えば、中国では、インターネットの閲覧に検閲があり、Google や Twitter、YouTubeのようなサイトにアクセスできません。ロシアでも、ウクライナ紛争を受け、規制が強化されています。このように国による制限が敷かれているところがあるのです。
ところが、Web3の世界では、中央集権的な管理組織は存在せず、ユーザー同士で管理を行っています。つまり、国が制限を敷く形にはなっていないのです。そのため、全員が自由にサービスを利用できるようになっています。
理由④中央管理者がおらず直接取引が可能
Web3には中央管理者がいません。ここがこれまでのWebの世界との大きな違いです。
例えば、お金の取引を例に挙げると、その違いがわかりやすくなります。普通は、銀行という中央管理者が存在し、お金の管理をし、取引をチェックしていました。
しかし、Web3では、このような中央管理者がいないので、介在者なく直接の取引が可能になっています。企業と個人、個人と個人というような直接取引ができるのです。
取引記録はブロックチェーン上に保存され、ユーザー同士で承認します。このような形態が一般化すると、中央管理者的な企業やサービスは不要になります。
その結果、手数料負担がなくなるだけでなく、今後の取引のありようにも変化が見えてくるでしょう。
理由⑤P2Pによりサーバーの安定性が向上する
PSPの正式な形は「Peer to Peer」で、その頭文字をとったものです。日本語にすると、「Peer」は「同等」ということで、コンピューター同士が対等な状態でやり取りすることを意味します。
Web3では、P2Pネットワークが構築され、ユーザーのコンピューターが同等の立場で情報管理をします。PSPにはいくつかメリットがありますが、大きなものとして、サーバーの安定性の向上が挙げられるでしょう。
従来のWebでは、企業が管理しているサーバーにアクセスが集中してしまうと、処理速度の遅れやダウンなどの問題が生じていました。
ところが、P2Pでは、複数のユーザーのマシンが情報管理していますから、アクセスが集中することはありません。そのため、処理速度の遅延や停止などの事態を回避でき、通信が安定するのです。
理由⑥企業のコントロールがなくなるので自由に発言が出来る
最近は、TwitterやInstagramなどのSNSでも過激な発言や誹謗中傷を削除したり、アカウントを閉鎖したりするようになっています。それは悪いことではありませんが、一歩間違えると、企業による言論統制になる恐れもあります。
悪質な言論は統制されてもいいのですが、そうでない言論まで統制されるのは困ります。しかし、これまでのWebの世界では、企業が統制することも可能でした。
一方、Web3の世界では、特定企業による管理は行われていないので、個人が自由に発言できるようになっています。
Web3(Web3.0)を活かしているサービス事例
Web3を実際に活かしているサービス事例があるので、2つ紹介しましょう。
事例①OpenSea(NFT売買プラットフォーム)
OpenSeaは代表的なNFT売買プラットフォーム。デジタルアートを販売・購入できるサイトです。ここでもWeb3が活用されています。
その仕組みは、中央管理者が存在せず、個人間売買が可能なこと。ユーザー登録も必要なく、IDやパスワードの入力も不要です。ウォレットとOpenSeaを連携するだけで、取引ができます。決済情報もいりません。
さらにP2Pということもあり、売り上げはリアルタイムで着金。ほかの決済方法にはないスピードぶりです。
事例②Brave(Webブラウザ)
Braveというブラウザをご存じでしょうか。BraveでもWeb3が活用されています。Web3時代の次世代ブラウザとも呼ばれています。
そのBraveの特徴は広告が表示されないこと。個人データを収集する広告はブロックします。YouTubeの動画広告の再生もありませんから、とても便利です。Web広告の通信データ量の節約もできます。
広告表示を許可した場合は、仮想通貨BATももらえます。
Web3(Web3.0)ではトラブルを自己解決する必要がある
Web3を管理する中央の企業はありません。ユーザー同士での管理・運営となります。
そのため、トラブルが起きたときもユーザーの自己責任となります。相談できるコールセンターもなく、確認できるマニュアルも存在しません。トラブルはすべて自己解決する必要があります。
Web3(Web3.0)により世界はどう変わるのか?展望について
Web3の普及に伴い、ますます分散型のネットワーク構築が進んでいくと思われます。
これまでは、企業がサービス提供→料金を受け取るというパターンがビジネスの基本的なあり方でしたが、Web3によってこの形態が変わるかもしれません。
中央集権型から分散型ネットワークになれば、新たなクリエイターエコノミーの形成もあるでしょう。
日本の経済担当相は衆院内閣委員会で「Web3.0を成長戦略に盛り込む」との発言をしています。今後は税制面の整備も含めて、Web3の活用環境が整っていくことになるでしょう。
Web3(Web3.0)の全貌まとめ
Web1.0、Web2.0と変遷をたどってきたネットワーク環境がWeb3という新しい局面を迎えています。Web3は次世代分散型インターネットとして、今後も活用範囲が広がっていくと思われます。
現在は、登場してから時間が経っていないこともあり、はっきりしない部分もありますが、準備だけはしておかなければいけません。それが時代に乗り遅れないためにも大切です。